実質控除率|「払戻率75%」を鵜呑みにしてはいけない
競艇の連系舟券の払戻率は75%、控除率は25%と公表されています。ところが実際に「全通り買った人」の回収率を数えると、そこまで届きません。差はどこへ消えるのか。返還やキャッシュバックまで含めて、手元に残る率を計算します。
「全通り買い」の実測回収率
ある券種の全組み合わせを100円ずつ買い続けたら、いくら戻るか。3連単なら120点=12,000円を投じて、的中した1点の払戻が返ってきます。これを146,856レース分積み上げた実測値が次のとおりです。
| 券種 | 点数 | 平均配当 | 全通り買いの回収率 | 名目75%との差 |
|---|---|---|---|---|
| 3連単 | 120点 | 7,224円 | −14.8pt | |
| 3連複 | 20点 | 1,231円 | −13.4pt | |
| 2連単 | 30点 | 1,828円 | −14.1pt | |
| 2連複 | 15点 | 923円 | −13.4pt |
全通りを均等に買うと、資金の大半はめったに来ない大穴の目に向かいます。そして大穴は買われすぎている(人気以上に売れている)ため、確率に対して配当が割に合いません。この歪みのぶんだけ、均等買いの回収率は名目を14.8ポイント下回ります。
これは競艇に限らず、公営競技とブックメーカーに共通して観測される「大穴の過剰人気(favorite–longshot bias)」です。
出目別の実測回収率
3連単の120通りそれぞれについて、「その目だけを毎レース100円買い続けた場合の回収率」を計算しました(出現率 × 平均配当 ÷ 100円)。
回収率が高い出目
| # | 出目 | 出現率 | 平均配当 | 回収率 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 1-2-3 | 7.03% | 1,143円 | |
| 2 | 1-3-2 | 5.25% | 1,504円 | |
| 3 | 1-2-6 | 2.8% | 2,768円 | |
| 4 | 1-5-2 | 2.04% | 3,757円 | |
| 5 | 3-1-4 | 1.49% | 5,157円 | |
| 6 | 1-5-3 | 1.83% | 4,092円 | |
| 7 | 1-6-2 | 1.26% | 5,920円 | |
| 8 | 4-2-6 | 0.43% | 17,486円 | |
| 9 | 2-1-3 | 2.11% | 3,530円 | |
| 10 | 1-2-5 | 3.6% | 2,045円 | |
| 11 | 1-4-2 | 3.52% | 2,080円 | |
| 12 | 1-3-4 | 4.52% | 1,598円 |
回収率が低い出目
| # | 出目 | 出現率 | 平均配当 | 回収率 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 6-2-4 | 0.14% | 23,045円 | |
| 2 | 6-4-3 | 0.1% | 37,015円 | |
| 3 | 6-5-4 | 0.08% | 48,838円 | |
| 4 | 6-5-3 | 0.07% | 50,841円 | |
| 5 | 6-5-2 | 0.09% | 43,837円 | |
| 6 | 6-3-5 | 0.09% | 42,867円 | |
| 7 | 6-3-2 | 0.14% | 29,086円 | |
| 8 | 6-4-2 | 0.13% | 31,116円 | |
| 9 | 5-6-4 | 0.15% | 28,989円 | |
| 10 | 5-6-3 | 0.16% | 27,687円 | |
| 11 | 6-5-1 | 0.12% | 35,380円 | |
| 12 | 6-1-5 | 0.17% | 26,460円 |
最高が1-2-3の80.4%、最低が6-2-4の32.4%。その差は48.0ポイントです。上位は1-2-3をはじめ堅い目が、下位は6号艇頭の大穴が並びます。
また、この集計には生存バイアスに似た注意点があります。過去に高回収率だった出目が今後も高いとは限りません。上の表は「人気の歪みがどれくらいの大きさか」を測る道具であって、買い目の推奨ではありません。
払戻はどこから来ているのか
| 3連単の配当帯 | レース数 | 出現割合 | 払戻総額に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 0〜1,000円 | 27,207 | ||
| 1,000〜3,000円 | 53,303 | ||
| 3,000〜10,000円 | 41,442 | ||
| 10,000〜50,000円 | 21,678 | ||
| 50,000円以上 | 3,082 |
万舟(10,000円以上)の決着は全体の16.9%しかないのに、払戻総額の67.8%を占めています。さらに5万円以上の決着は2.1%しか起きないのに、払戻の26.0%を生んでいます。回収の大半は、めったに起きない決着から来ているということです。
これは資金管理の話に直結します。均等買いの期待回収率60.2%は「長期平均すれば」の話であり、短期の収支はそのわずかな大当たりを引けたかどうかでほぼ決まります。試行回数が少ないうちは、期待値どおりにはなりません。
返還を含めた実質控除率
フライング(F)・出遅れ(L)・欠場が発生すると、その艇が絡む舟券は全額返還されます。返還された金額は売上から除かれるため、控除の対象になりません。したがって、購入総額に対する実質的な控除率は次のように下がります。
実質控除率 = 25% ×(1 − 返還率)
| 購入額に占める返還の割合 | 実質控除率 |
|---|---|
| 0% | 25.0% |
| 1% | 24.75% |
| 2% | 24.50% |
| 3% | 24.25% |
当サイトのデータでは、6艇そろわなかったレースが5,427件(全体の3.2%)ありました。ただしこれは発売前の欠場(返還の対象外)も含む数字で、返還率そのものではありません。いずれにせよ効果は1ポイント未満で、控除率25%を実質的に動かすほどではありません。「返還があるから有利」という話にはなりません。
キャッシュバック・ポイント還元を含めるとどうなるか
投票サイトによっては購入額に応じた還元があります。還元率をk%とすると、購入額に対する期待損失は単純にk%ぶん軽くなります。
| 還元率 | 名目ベースの実質控除率 | 全通り均等買いをした場合の実質損失 |
|---|---|---|
| 0% | 25.0% | 39.8% |
| 0.5% | 24.5% | 39.3% |
| 1.0% | 24.0% | 38.8% |
| 2.0% | 23.0% | 37.8% |
| 3.0% | 22.0% | 36.8% |
| 5.0% | 20.0% | 34.8% |
一方で、買い方の違いによる回収率の差は80.4% 対 32.4%=48.0ポイントもありました。還元率の比較に費やす労力の100倍は、買い目の選び方に使うべきだということです。
もちろん還元はプラスです。ただしそれは控除率という土俵の上で戦うことを前提にした、わずかな追い風にすぎません。
まとめ
- 名目の払戻率は75%だが、3連単を全通り均等に買った実測は60.2%
- 差の14.8ポイントは大穴の過剰人気によるもの
- 出目別の回収率は32.4%〜80.4%。どれを選んでも100%には届かない
- 払戻総額の67.8%は万舟決着から。期待値どおりの収支になるには膨大な試行が要る
- 返還を考慮しても実質控除率はほとんど動かない(1ポイント未満)
- キャッシュバック1%の価値は、買い方の差に比べれば誤差の範囲